見えない現実と生きている ― 統合失調症というこころの病


  1. 「現実」との境界があいまいになる感覚
  2. 統合失調症とは?
  3. どんな症状があるのか
  4. 本人の苦しみは、想像以上に深い
  5. 偏見や誤解が回復の妨げになることも
  6. 治療と支援 ―「回復」はできる
  7. 理解が、誰かの生きやすさにつながる

「現実」の感覚が揺らいでしまうとき

誰かに見られている気がする。
声が聞こえる。
テレビや通行人が、自分のことを話しているように思える。

それは、幻でも、妄想でもない。
本人にとっては、たしかに「現実」なのです。

統合失調症は、そうした「現実との境界」があいまいになるこころの病。
けれどそれは、ただの“精神異常”ではありません。
繊細で、感受性の強い心が、あるときバランスを崩してしまった状態とも言えます。


統合失調症とは?

統合失調症は、現実を捉える脳の働きに乱れが生じることで、さまざまな症状が現れる精神疾患です。

100人に1人がかかるとも言われており、決してめずらしい病気ではありません。

発症は10代後半〜30代前半が多く、思春期のストレスや生活の変化が引き金になることもあります。
原因はまだ完全にはわかっていませんが、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れや、遺伝的な要素、環境ストレスが関係していると考えられています。


どんな症状があるのか

統合失調症の主な症状は、大きく3つに分類されます。

1. 陽性症状(あらわれすぎる症状)

  • 幻聴(聞こえるはずのない声が聞こえる)
  • 妄想(誰かに狙われている、操られているなど)
  • 考えがまとまらない、話が飛んでしまう

2. 陰性症状(なくなってしまう症状)

  • 感情が乏しくなる
  • 無気力、引きこもり、言葉が少なくなる
  • 喜びや意欲が感じにくくなる

3. 認知機能の障害

  • 注意力・記憶力・判断力の低下
  • 物事を整理したり、人と自然に会話することが難しくなる

これらの症状は、波のように現れたり、落ち着いたりします。
回復期には、外見だけでは気づけない「内面的な困りごと」が残ることもあります。


本人の苦しみは、想像以上に深い

幻聴や妄想は、外から見ると「おかしなこと」に見えるかもしれません。
けれど本人にとっては、とてもリアルで怖いものです。

「誰かに監視されている」
「頭の中に声が入ってくる」
「みんなが自分の悪口を言っている」

そう感じながら日常を送ることは、息をするだけでも精一杯なほどの苦しみです。

また、薬の副作用や社会の偏見によって、「話すことをやめてしまう」「誰にも頼れなくなる」といった二次的な苦しみも生まれます。


偏見や誤解が、回復の妨げになる

「怖い人なんでしょ?」
「事件を起こしそう」
「一生よくならない病気じゃないの?」

こうしたイメージは、メディアの報道や知識不足から生まれる偏見です。
実際には、適切な治療と支援があれば、多くの人が日常生活を取り戻しています

偏見によって人とのつながりが断たれてしまうと、回復のチャンスさえ失われてしまいます。
だからこそ、社会の理解と関心がとても重要なのです。


治療と支援 ―「回復」はできる

統合失調症は、長期的な付き合いが必要な病気ではありますが、回復は可能です。

  • 抗精神病薬による薬物療法
  • カウンセリングや認知行動療法
  • デイケア、作業所、就労支援などの社会的リハビリ
  • 家族や地域とのつながり

大切なのは、「治す」ことだけを目指すのではなく、その人が自分らしく、安心して暮らせる環境を整えていくことです。


理解が、誰かの生きやすさにつながる

統合失調症は、目に見えにくく、誤解されやすい病気です。
でも、その人の中には、苦しみながらも懸命に生きようとしている心があります。

理解は、すべてを知ることではありません。
「わからないけど、そばにいるよ」
「その気持ちを否定しないよ」

そのやさしい一言が、誰かの心に灯る光になります。


「見えない現実」の中で必死に生きている人たちが、
少しでも安心して息ができるような社会になりますように。


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